くらし・育児

食洗機は必要?不要?時短家電を巡る論争と変えるべき「常識」とは?

食洗機。自動調理器やロボット掃除機と並ぶ時短家電の代表格。しかし、2019年の普及率は約34%(内閣府「消費動向調査」)と、決して高い数字ではありません。

食洗機は家電の中でも費用が高く、設置工事や必要部品を揃えると軽く10万円を超えます。また、大容量の食洗機は、日本の狭いキッチンに入れるとかなり窮屈になってしまいます。

しかし、食洗機を導入すると洗い物に要する時間は劇的に削減されます。我が家は5人家族で、皿洗いにかかる時間は7割程度削減できました

特に夕食後の過ごし方が大きく変わり、子供が寝る前の絵本読み聞かせ時間を確保できるようになりました。

その他、水光熱費が下がった、妻の手荒れが軽くなったなどもあり「買って大正解だった」と思っています。また、共働き夫婦はもちろん、我が家のような専業主婦家庭でも、食洗機は必要とも思っています。

実は、食洗機を導入するにあたりちょっとショックなエピソードがありました
この記事では、食洗機を買った経緯、食洗機が普及しない理由の考察をご紹介した後、食洗機のメリットデメリット、食洗機の選び方、設置の方法、使用上の注意点を解説します。

この記事は、以下の人におすすめです。

・食洗機を買おうか迷っている人
・食洗機のコスパに不安がある人
・設置方法や使用方法を知りたい人

ちょっとショックなエピソード

妻との会話

今の住まいに引っ越したのは2年前。大型家具、家電を買い揃えて一段落した12月。冬のボーナス時期でもあり、食洗機の購入について妻に相談しました。

筆者「食洗機って欲しい?今度のボーナスで買ってもいいけど」

妻「えっ!?いいの?…」

筆者「いいの?って、どういうこと…?」

妻「いや、嬉しいけど…本当にいいの?」

どうやら妻は、バリバリのワーママ家庭でもない限り、食洗機など買ってはいけないものと思っていたようでした。

つまり、主婦は皿洗いをやって当然で、食洗機など贅沢品。という思考が、男性だけでなく女性にも刷り込まれていたんです。

主婦=家事=時給0円の不思議

何故、主婦は食洗機など買ってはいけないのでしょうか?食洗機は本当に贅沢品なのでしょうか?違和感を覚えたので調べてみました。

まず、結婚をすると、家事は個々の家庭環境を維持・保全するための「無償労働」となります。自分の家なのだから、対価をもらうのはおかしい、という考えです。それ自体は問題ではありませんね。しかし、問題なのは、女性が無償労働を行うことが「常識」とされていることです。

人為的に造られた「常識」

まず、サラリーマン×専業主婦というスタイルが確立したのは1950年代以降。産業構造が第2次産業(工業)へ移行する時期です。ちょうど私達の親世代ですね。子供の頃の経験は、私達の価値観に大きく影響を与えます。私達は、知らない間に専業主婦=ママが家事の全てを担うと刷り込まれているのです。

さらに明治まで遡ると、明治31年(1989年)に制定された「家制度」があり、明確に男尊女卑の定めがあります。女性は男性の家に嫁入りし、滅私奉公、その家の繁栄のために尽くすとされています。じじばば世代の更に前には、このような環境下で家族という組織が営まれ、家事は女性がやること、と定義されてきました。

言いたいことは、私達の「常識」は善悪の判断によって作られたものではなく、子供の時に見た親の姿、先代の営みによって造られたものだ、というです。家事をするのは女性、という考えがなんとなく正当化されているのは、過去の歴史に引きずられている証拠だと考えます。

家事労働、皿洗いを中立的に考える

一度、ニュートラルな頭で「家事労働」を考えてみましょう。家事労働は人的資本の投入であり、ノーコスト(0円)ではありません。そして、皿洗いは家事の中でも発展性のない、非生産的なルーティンワークです。

皿洗いが好きであれば話は変わりますが、皿洗いは「やりたくない家事」の上位に入ります。その時間を省くことができれば、家庭全体の生産性は間違いなく向上します。

食洗機と家事労働を比較してみる

一方、食洗機を導入しても、完全に0分にはできません。予備洗いや食器の選別、食洗機NGな食器を洗う必要があります。
それでも、皿洗いにかける時間が朝と昼に15分ずつ、夜に30分かかるとすると、1日60分かかっていた時間を30分程度に削減できます。

食洗機を導入するためには大きな初期費用(イニシャルコスト)がかかりますが、家事を人件費(ランニングコスト)と比較して、どの程度経済的効果があるかを検証してみましょう。

据え置き型の食洗機を高めに見積もって15万円とします。耐用年数は5年~10年と言われており、1日30分の削減、1年で180時間の削減、5年で900時間の削減となり、時間あたりコストは170円にも届きません。2年で壊れると仮定しても、時間当たりコストは420円程度です。

専業主婦が「食洗機は高くて買えない」という考えは「主婦の時給は170円にも満たない」ということと同義です。

家事は無償労働だから、主婦に人件費の考え方が適用されないのは一理ありますが、一方で非生産的な家事に主婦を縛り付けているのではないか?という発想はできないでしょうか。

食洗機導入がもたらす効果とは?

上記は耐用年数から導いたコストですが、実際に導入して効果ペイするタイミングを検証しましょう。導入時の初期費用を15万円、皿洗いにかかる人件費(ランニングコスト)を時給1,000円(最低賃金の792円も追加)とすると、以下の通りとなります。

なんと、時給1,000円(オレンジ)の場合は1年も経たずに投資回収。最低賃金の時給792円(緑)でも2年目の前半で投資回収となります。

 

食器洗いは、チリツモで時間を奪う家事です。確かに初期費用は大きいですが、投資回収の期間が短い、有用な投資と位置付けることは本当にできないのでしょうか。

食洗機をめぐる3大ガッカリ論争

上記のような話をすると、食洗機反対派の人達からは以下のようなガッカリする質問が聞こえてきます。そんな反対意見に対する1問1答を用意してみました。

30分時間を削った所で何ができるのか?

まずは、時間に対する質問です。1日たった30分の時間を削減したことで、何が変わるのか?何も変わらないのではないか?という趣旨です。

回答は「1年で180時間ものスキマ時間ができるので、何らか有効活用する」です。スキルアップのための勉強でも良いし、お風呂にゆっくり入ってリフレッシュするでも良いです。時間があると、それだけで心の余裕ができますし、まとまった時間が取れるのであれば、自己研鑽をする余裕も生まれます。

今までやっていた家事を何故減らしたいのか?

2つ目は、今まで出来ていた事なのに、何故できない・減らしたいと言ってくるのか?という質問です。高い買い物をする意味はあるのか?とも受け取れます。

答えとしては、「今までは仕方なくやっていたから」です。お皿を手洗いするのが普通と思い、生産性が無いと思いながらもやっていた という家庭が多いのではないでしょうか。人はやりたくないこと、生産性が低いと分かっていることに取り組むと、モチベーションが大幅に低下します。そして、数あるアンケート結果の中で、皿洗いは「やりたくない家事」の上位にランクインします。食洗機を導入しルーティンワークを効率化することで、時間創出だけでなくモチベーションの維持にも寄与します。

そんなに楽をしたいのか?

3つ目は、主婦で楽をしているのに、さらに楽をしたいのか?というマウントですね。

家事は楽ではありませんし、精神修行であってはなりません。家事の大半は単純作業であり、効率化できるなら、ある程度の支出も合理的と言えます。

大切なのは、皿洗いという非生産的な仕事に人を縛り付けないという考え方です。

家事労働=人的資本の投入=効率化の対象と考えなければ、その家庭の生産性は1950年代のままになります。

個人的な思いとしては、「主婦は皿洗いくらいやれよ」という時代から「旦那は食洗機くらい買えよ」という時代に早く変わって欲しいと感じています。普及率34%は、昔のままの価値観でいる家庭が多い証拠だなと思えてしまいます。

 

以上を踏まえて、実際に食洗機を使って感じるメリット、デメリットをご紹介します。

食洗機のメリット・デメリット

メリット

食器洗いの手間が省ける

食べ終わったお皿をサッとゆすいで、食洗機にポイっとできます。朝の忙しい時間や、夕飯で大量の食器を扱う時には簡単、便利です。
特に、仕事で忙しかった時や、疲れている時、子供に目が離せない時ほど食洗機の存在は際立ちます。皿洗いなんてやってられない!という時、ありますよね?

筆者は飲食店バイトの経験もあり、皿洗いは得意でしたが、体調の悪い時や子供の相手でヘトヘトになった時はしんどかったです。

食洗機は、時短だけでなく、不調な時に家事を代替できるバックアップ的な機能も果たしてくれます。

水道代、光熱費が安くなる

食洗機は多くの水を使うと考えがちですが、実は食洗機の方が節水になります。日本電機工業会自主基準によると、手洗いの1/6の水で洗うことができます。その他光熱費を加味すると、1回あたりの経費は1/2程度になります。
Panasonic公式ページご参照

食器がピカピカ、ツルツルになる

表現が若干幼稚ですが、食洗機では高温・高圧の水を噴出して汚れを取ります。また、台所用洗剤と食洗機用の洗剤は全く異なる成分のため、食洗機で洗うと、CMで出てくるような洗い上がりを実感できます。

〈洗剤の成分イメージ〉


(Panasonic公式ページより引用)

手荒れが軽減される

実は、食洗機を導入して妻が一番喜んだのが手荒れの軽減です。食器洗いは、洗剤と水を大量に使用するため、手に負担がかかります。特に女性の手は油分が少ないため、食器洗いという家事自体が苦行になります。食洗機は、奥様の手を守ることもできます。

デメリット

本体価格、取付工事費が高い

食洗機は、ファミリータイプでは本体だけで10万円程度かかる高額家電です。加えて、取付、給排水の工事が必要なので予算が膨れ上がります。下記は我が家の場合です(値引き後)

本体:95,000円
分岐栓:7,500円
専用台:9,500円
取付工事:5,500円
合計:117,500円

場所を取る

据え置き型の食洗機は、容量を大きくする程に場所を取ります。ファミリータイプとなると高さもあるため、日本の狭いキッチンだと窮屈になってしまいます。専用台を使ってリフトアップしたり、置き方を工夫する必要があります。
(配置については後述します)

食洗機NGな食器があり、買換えが必要

お皿や茶碗など、熱に耐えられるものであれば問題ありませんが、お箸や小皿、汁椀などは手洗いをするか、食洗機対応のものを購入する必要があります。

洗浄~乾燥に時間がかかる

洗浄レベルに寄って変わりますが、洗浄~乾燥までの間1~2時間は必要です。食器の数が少ない時は手洗いの方が早かったり、使いたい食器がすぐ使えない場合があります。

音がうるさい

食洗機は、複数のノズルが動きながら高温・高圧の水を噴出します。その際のモーター音や洗浄音はうるさく聞こえてしまいます。慣れれば何とも思いませんが、購入して間もない時は違和感を感じていました。

食洗機のタイプと配置

食洗機のタイプ

食洗機は、キッチンの内部に埋め込むビルトインタイプと、キッチンの上や横に置く据え置きタイプの2種類がありますが、一長一短あります。イニシャルコストで考えると据え置き型がリーズナブルですが、その際は場所の確保が必要です。

ビルトインタイプ
〇 場所を取らない
× 取付・取外・配管工事費が高い
(30万~50万程度)

据え置きタイプ
〇取付・取外・配管工事費が安い
(10万~15万程度)
×場所を取る、場所を選ぶ

また、据え置きタイプについては以下の2パターンに分かれます。

ファミリータイプ

30点~40点収納可能なタイプ。お皿や茶碗はもちろん、まな板や鍋、フライパンまで洗えてしまう大容量の食洗機。

コンパクトタイプ

10点~20点収納するタイプ。キッチンに備え付けても邪魔にならない、2人~3人暮らしには丁度いい大きさ。

個人的には、場所に余裕があれば、ファミリータイプにして夜に1度食洗機を回す方が経済的かと考えます。

食洗機の配置

据え置き型の配置については、以下の3パターンが基本です。

・正面置き(キッチンの中央)
・横置き(左右の壁に着ける)
・カウンター置き(カウンター台に置く)

ご家庭の好みやキッチンの形状によりますが、いずれにしても、大きなスペースを取るため、食洗機をリフトアップする専用台を設置するなどして、デッドスペースを少なくしましょう。我が家は伸長式の台を購入し、壁に着けて横置きにしています。

Panasonicの食洗機ページでは、AR技術を使い、スマホでキッチンを映しながら食洗機設置のシミュレーションができます。アプリ不要なのでおすすめです。

スマホで設置シミュレーション

購入~設置の流れ

食洗機はネットでも買う事ができますが、ご自身がよく利用する家電量販店で買うことを強くおすすめします。理由は、取付、配管工事が必要だからです。

据え置き型にしてもビルトインにしても、配管・取付工事を自力でできる人はまずいません。分岐水栓を自分で調べて買うこともできますが、専門業者に確認を取ってから注文しても遅くはありません。

一方で、分岐栓や食洗機の台は自分で買う方が安くなりますので、以下の買い方がおすすめです。

・家電量販店で買うもの:本体
・自分で買うもの:食洗機の台、分岐栓(業者確認後)

以上を踏まえて、食洗機の購入~設置の流れを記載すると以下の通りです。

1.家電量販店で見積もり、来訪の予約を取る

2.設置業者にキッチン周り、分岐栓の型を確認してもらう

3.再度家電量販店で購入する

4.設置業者に設置してもらう

手間を省きたいのであれば1.の時点が全て買ってしまってもかまいません。筆者は他店と競合させながら購入したため工程が増えました。(結果、1万5000円程度値引きしてくれました)

我が家が採用した機種について

筆者が買ったのは、据え置き型のPanasonic NP-TZシリーズです。フラッグシップモデル(いわゆる高級モデル)ですが、以下の理由からTZシリーズを購入しました。

TZシリーズの公式ページはこちら

大容量

まずは収納力。お皿や茶碗、コップはもちろん、包丁、まな板、おたまやフライ返しなど、ありとあらゆるものを突っ込めますw入れた時の写真は以下の通りです。

【全体写真】


【上段のアップ写真】

5人家族なので、食器全ては入りませんが、7割~8割程度は収納できます。

ハンズフリー開閉

食洗機に残菜を入れると手入れが面倒なので、食器を入れる際には軽く水洗いをしてから入れます。その際、手を当てるだけで扉の開閉を自動で行うのがTZシリーズです。他の機種では手で押さないと開けませんが、濡れた食器を持ったまま開けるのはストレスがありました。

除菌・消臭機能

最後に、除菌・消臭機能です。ナノイーX搭載機種のみですが、食器を食洗機に入れたまま放置しても臭いが溜まらず、菌の繁殖を防いでくれます。

イメージし難いかと思いますが。朝ごはんの食器を食洗機に入れておいて、昼ごはんが終わったら食器を足して洗うことができます。
また、夜に洗浄予約をしておいて、朝に取り出すだけにしておくことができます。

消臭・除菌がきちんとしていないと、食洗機の掃除やメンテナンスに手間がかかり、結局買わない方が良かったという事態にもなりかねないため、消臭・除菌機能付を選びました。

その他、使用上の留意点

最後に、食洗機を使用する際の注意事項を記載します。個人的な感想も含めますが、他のブログでも言及があったため、参考として記載します。

予備洗いは必要

食洗機は高温、高圧の水を吹きかけるスタイルなので、乾いてこびり付いた汚れは苦手です。また、少量の水を循環させるため、残菜は極力少なくすることがベターです。ゴムベラでサッと落とす程度はやった方がいいと考えます。

鍋やフライパンは入れない方がいい

我が家では食洗機対応の鍋、フライパンを入れてましたが、入れない方がいいと感じました。食洗機は高温、高圧に加え、漂白成分の入った洗剤を使います。熱と洗剤の成分によっては塗装を剥がす可能性があり、食洗機対応と言っても鵜呑みにしない方が良いと考えます。

アドバイスとしては、箸や汁椀などの食器を食洗機対応にして、鍋やフライパンはゴムベラとキッチンペーパーで手洗いすることをおすすめします。

慣れるまではキャパシティが小さく感じる

最後は、食洗機に入れる食器の量です。最初のうちは慣れていないため、遠慮しがちになります。結果的に余裕をもった点数しか入れないため、「思ったよりも入らない・・」といった不満が起きやすいです。
しかし、慣れによって変わってきます。我が家は、最初の2倍くらいの量は余裕で入るようになりましたw

まとめ

食洗機は、購入~設置に至る初期費用が10万円を超える高額家電です。費用の高さに躊躇しがちですが、食器洗いにかかる労力を確実に減らすことができる家電です。

やりたい事をやらせてあげることは大切ですが、やりたくない事を省くことで得られる満足も大きいです。

食洗機は、憂鬱な家事の時間を、楽しい家族団欒の時間に変えることのできるアイテムです。

是非一度、パートナーの意見を聞いてみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

その他、休日の過ごし方についても記事を書いています。

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